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2008年12月の記事一覧

平成20年度 2学期終業式

2008.12.22

夏目漱石の著作の中に「夢十夜」という短編小説があります。

その「第六夜」のあらすじはこのようなものです。

『運慶が、(東京文京区にある)護国寺の山門で仁王を刻んでいるという評判で行ってみた。大勢の見物人が集まって、あれこれと評価している。運慶は、うるさい見物客に委細頓着なく鑿と槌を動かし高いところに乗って堅い木を彫り抜いて行く。厚い木屑が槌の声に応じて飛んだと思ったら、小鼻の開いた怒り鼻の側面がたちまち浮き上がってきた。その刀の入れ方がいかにも無遠慮で、少しの疑念も差し挟んでいないように見えた。それを見てある男が、「なに、あれは眉や鼻を鑿で作るんじゃない。あのとおりの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、鑿と槌の力で掘り出すまでだ。決して間違うはずはない。」と言った。そこで自分も仁王が彫ってみたくなって家へ帰って、裏の庭に積んであった薪にする樫の木に彫ってみた。ところが何本彫っても仁王の蔵してある木はなかった。ついに、明治の木にはとうてい仁王は埋まっていないものだと悟った。』

 

運慶は、日本史にも登場する平安末期から鎌倉時代の有名な彫刻師です。

明治時代の文豪漱石は、文明開化により外国の文化が垣根なく入ってきて、日本の文化や日本の精神がだんだんと衰退していくことを嘆いていました。漱石は、運慶で象徴される価値ある日本文化やその継承者が存在し続けてほしかった。本来なら、運慶の次の世代の名人が輩出され、いよいよ文化を深め、時代を次々支えてくるはずだったが、そうならなかったため運慶(の精神が)がこの時代に至るまで生き残らざるをえなかった。それが、夢となって明治の世に現れたのです。

さて、私は、純粋に運慶と言う達人のすごさを感じました。と同時に、真理というものは求めるというより、どこかに蔵されていて、必死に努力を続ける人により掘り出されるようなものなのかと思いました。

今年も、残り十日となりました。この冬休み、目の前にある多くの堅い木の中から、つまり具体的に言えば、受験勉強や部活動などの中から、隠された真理を掘り出すため、自分のエネルギーのすべてを投入してほしい。

 

三年生の受験生諸君、最後の一時間、一分、一秒まで努力を!十回で覚えられなければ百回やって覚える!その努力が人生を切り開く原動力になるのです。

三年生で推薦により進路が決定している諸君、合格通知が来たから、あとは適当に生活してもいいのではないか、という人はいないだろうか。推薦決定後は特別な意識を持って、残った高校生活を模範的な態度や姿勢で過ごすことが条件となります。それができない場合は、推薦条件に満たさない人物であると判明する事実が生じたので推薦を撤回する場合もあると考えてください。

二年生、一年生、三学期は本当にグレイドアップできるかどうかという重要な時です。二年生は武南高校を引っ張る存在となるのです。勉強においても部活動においても、意識と実行がぴったりと一致すること、そのように生きてください。

一年生は、新入生が入学してきた時、先輩としての存在価値を示せるよう、自分の良いところを更に伸ばす努力をしてください。

新しい年は、君たちの手で、自分の周りにある蔵された真理を掘り出すための努力の年となることを心から期待しています。

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