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学校法人 武南学園 武南高等学校

“永遠の夏”~引退する3年生へ~

陸上競技部 2016年07月21日

 

今年も、また、この季節がやってきました。国体少年の部、第一次南部地区予選会。インターハイ・国体・日本ジュニア・関東選手権など、まだビッグゲームはこれからの夏~秋シーズンにかけて行われます。しかし、このようなビッグゲームに出場できるのは本校の陸上競技部の部員でも数名です。その数名を除く3年生部員はしたがって、今後、目標とする大会がなくなります。すなわち、国体南部地区予選会が例年、3年生の引退試合となります。今年もインターハイ・関東選手権出場予定の2名を除く、選手14名、マネージャー1名が7月16日・17日の大会を持って一区切りとなりました。

 

この世代は2014年の4月、本校に入学してきました。中学時代に陸上競技をやっていた者、全くの初心者と様々でした。例年に比べると、中学時代の実績は見劣る部員が多かったと思います。3年間頑張ってきましたが、良い思いが出来たのは少なかったと思います。しかし、この世代は競技力は低かったけれども、その一つ上、二つ上の世代よりも前向きで明るい部員が多くいました。練習中も笑顔が絶えず、明るい雰囲気でしたが、おしゃべりも多く、顧問から注意される時もありました。そんな元気の良い、そして仲の良いチームを男子キャプテン齋藤隼・女子キャプテン鴨下瑞希が中心となって作り上げていきました。入部から、引退まで振り返れば、あっという間でした。

 

その3年生が、最後の試合で下級生に残せた、メッセージとして送ったのは何だったのでしょうか。

 

今を遡ること20数年前(30年近く前と言った方が正解ですね…)、当時、キャプテンを務めていた私も、8月引退の時期を迎えました。当時は7月のこの大会のあと、8月にもう一度、学校対抗の県大会があったので、夏休み最後まで終えて、引退という形でした。自分自身、インターハイはおろか、関東大会への個人出場は一度もないような競技力の低いキャプテンでしたので、後輩に競技レベルで何かを示すことは、ほとんどできませんでした。しかし、私の後輩は競技力が高い者が数名おり、彼らが1年後、2年後に活躍してくれることを信じて、後輩達に厳しく接したのを覚えています。自分の無念を後輩達に託す、今、思うと、それが、私の指導者としてのスタートだったのかもしれません。そして、部活動を引退する日の寂しさ、せつなさは、言葉に言い表せません。3年間苦楽を共にした仲間と、青春の全てをかけたと言っても良い、陸上競技部から引退しなければならないという現実。心の中の喪失感・虚無感が数日、続いたことを今も忘れられません。あの夏の日は今も“永遠の夏”として私の心の中に残っています。

 

今年の3年生はどうでしょうか。おそらく、そのような思いが今、3年生部員の胸の中にも去来しているはずです。また、そうであって欲しいです。この7月の大会が、“永遠の夏”になって欲しいです。いつまでもいつまでも、今後、何年も、何十年も、今日の思いを、そして陸上競技を通じて、高校時代を大切な仲間と過ごしたことを忘れずにいてください。

 

3年生がこの2日間で最後に見せた、パフォーマンスは自己新記録を更新するベストパフォーマンスではなかったかもしれない。だが、今、出来る最上のパフォーマンスだったと私は思います。それは、3年生が一年前の今頃、去年の先輩達から受け継いだバトンを、現1、2年生に、しっかりと渡した瞬間でもあるのです。30年近く前に私も先輩から引き継ぎ、そして後輩へ渡したバトンでもあるのです。リレーにはオーバーゾーンや、バトンを落として失格になってしまうこともあります。しかし、この“武南の伝統”というバトンは脈々と受け継がれているのです。そして、今年も、バトンパスの時が来たのです。きちんと、正確に、一番良い位置で、そしてトップスピードで走れるように3年生が渡してくれました。あとは、3年生諸君が、日々、指導してきた後輩達を信じて、夢を託してください。きっと、後輩達がやってくれます。

 

そして、3年生諸君は陸上競技で達成できなかった目標・夢を、進路という競技会で必ず達成してください。それができる部員だと信じています。