第56回 卒業式
2021/03/03
第56回 武南高等学校卒業証書授与式
コロナ禍ということもあり、会場側から半分以下での開催を求められてもいたので、今年の卒業式は、3学年の生徒と教員だけで行われました。それでも、とっても立派な式だったので、マスクを付けたままではありますが、できるだけ多くの生徒の姿を紹介したいと思います。
生徒会長の送辞をうけ、卒業生代表の青木さんの答辞は、これまでの答辞とは違う視点で語られるものでした。それは、努力すれば夢は叶うという価値観をなぞりながら3年間を振り返るといったものではなく、自分たちは、小中学校時代の修学旅行で日光東照宮も清水寺も修繕工事中であったこと、高校の修学旅行でも香港に寄らなければならなかったこと。共通テストと名を変え、その実態は当日までわからないという試練に見舞われたこと、を挙げ、将来、自分たちは ”不遇なコロナ世代” と呼ばれることになるだろうと分析し、さらに、自分自身も、他に才能をみつけたと7年間続けてきたサッカー部を1日で辞め…「逃げた」と思われることもあったけど、時として、逃げることは賢い選択となりえるのではないかということも学んだ豊かな高校生活だった、と結ぶものでした。彼の言葉を引用します。
「何かを頑張ってきた人にとって、その何かから逃げていく人たちは情けなく、とても小さい存在に映るものです。それでも、私は思います。『逃げるな、立ち向かえ』なんて根性論は、何かをやり遂げ、成し遂げられる意志の強い人の経験則だと。…中略…逃げることを選択肢に取り入れてもいい。それが、寛容を標榜する私が、今、心から思うことです。…中略…512名それぞれが己の道を進み続け、やがて踏破できることを信じます。」
思いのこもった答辞でした。学年会で答辞に青木さんを選んだ経緯をお話すると、成績、人物的に申し分ないのは言うまでもないことですが、在学中、カクヨムWeb小説コンテストで受賞し、将来、物を書くことを生業にしたいという彼への最後の課題、彼なら武南での3年間をどう描くことができるのかを試してみたかったからでした。彼は受賞したラブコメ作品を足がかりに、次のステージへ向かうため、先日、3年生の時の担任でもあった国語科の橋本先生から、たくさん本をもらって笑顔で担いで帰ったのだとか…これからが楽しみな逸材です。
コロナ禍ということで、コンパクトな卒業式になりましたが、“武南らしい” 良い卒業式になりました。しっかりと行動する生徒たちを見ていて、答辞を聞いて、一所懸命に頑張らず、色々ポジショニングを試すことで、最も自分が輝ける場所を探す、つまり、しなやかに、したたかに、自分の勝てる場所にポジショニングをとるという発想も、不透明なこれからの世界を生き抜いていくには必要な知恵なんだろうなぁということが頭を過りました。青春武南時代に成功体験を味わった生徒達だけでなく、高校3年間、部活、受験、人間関係で自分の思うような結果を残すことのできなかった仲間達にも共感をよぶエールだったように思いました。
卒業おめでとうございます。
May you have a bright future ahead after the coronavirus pandemic is overcome!