真に健全で個性豊かな人間教育の樹立

学校法人 武南学園 武南高等学校

【特進】標本会議

new! 2024/12/03

 

国語科 畑先生の授業において、劇作家松井周先生をお招きし『標本会議』を行いました。

New York Timesで「最も注目すべき演出家」と紹介されたこともある演出家、俳優でもある松井先生の手がけた「標本会議」とは、カードに書かれた役割になって会議をすることで、誰でも俳優として演劇しながら、他者理解、自己理解を深めていくというカードゲームです。簡単にゲームの流れを説明してみます。

<役割決定>

最初に、配られた「医者」「政治家」「占い師」など…カードに書かれた主人公になりきって、「自分がどんな人物なのか」グループのみんなに話します。たくましい創造力を発揮して、生徒たちは、雑談形式で笑いをとりながら自分語りをしていきます。

<会議①>

テーマ「マイナンバーチップを身体に埋め込みます!」が与えられます。

なりきった人物なら、テーマに賛成か反対かを表明し、その理由を、その人物になったつもりで説明します。ここでは論破することが目的ではなく、互いの意見をリスペクトし、全体に貢献することが大切になります。

<アクションカード>

次に、「闇バイト」、「ストーカー」、「推し活で借金500万円」など、ネガティブな事件が多く書かれているカードを引き、どうしてそんなことをしてしまったのかを、その人物になりきって語ります。

<会議②>

しでかしたアクションも含めて、再びテーマについて議論していくと、これまで意識してもこなかった視点に気づく生徒もでてきます。さらに、2、3名のグループになって、お互い説得をはかりながら考えを深めていき、最後に決議します。

<振り返り>

最後に、グループの中で意見が変わっていく過程、気づいたことを全体に発表します。また、各自、役を離れた自分自身の意見も考えて終了です。

<生徒の感想>

自分の意見を持って他人と擦り合わせていくことがすごく楽しかったです。

自分ではない人になりきることで、その人だったらこう考えるなと想像力をはたらかせて話し合うのがとても楽しかったです。

アクションカードに書かれていた過去の行動にとんでもない行動が多くびっくりした。けれどそういうのがあるからこそ意見が変わったり、新たな意見も生まれたりすると思った。

みんなそれぞれが違う立場にあることが明確であることで意見の違いがわかりやすかったし、それぞれの意見をみんなから積極的に出せる雰囲気があったので話しあいがしやすかったし、盛り上がることもできた。普段の授業での話しあいも意見を自分の中でより明確にすることで活発な活動ができるようになると思った。

友達の意見を聞きながら、自分のなるべき役になりなって辻棲が合うように自分の意見を考えるのが難しかったです。職業的に、質問を多く受けたので瞬時に答えを出すのも難しかったです。

国会議員になりきらなければならなかったのに、政治の知識があまりないので、具体的な理由が思いつきづらかったです。何事にもたくさんの知識をつけて、自分の財産にしていきたいです。

役職になりきって会議に参加するってどんな感じか想像つかなくて、上手く話せるかどうかとか、なりきるってどうやるんだ?とか思ってました。でもやってみて、全然想像より楽しかったです。特にみんなが過去にやったことを言っていく場面は涙が出るくらい面白かったです。

おもしろかったし、他の役割とかもやってみたいから定期的にやりたいと思いました。

 

『標本教室』で演じる生徒たちを見ていて、各自が小さな思考の壁を越えて表現しているのに気づきました。

「自分の壁を越える」というと、幼稚園児なら「逆上がりができるようになった」、高校生なら「英検2級に合格できた」など、肉体的成長によるものか、誰かの決めた基準を知識量で超えるということで、一般的に体感できるものだと思っていましたが、『標本教室』を見て、「演劇」の持つ可能性、他者理解の手段として「演劇」が優れていると強く感じました。日頃の授業で、「もっと深く考えて小論文、英検準1級の英作文は書くように!」と、抽象的に生徒に働きかけることはあっても、実際、「深く考える」とは、具体的にどういうアプローチをするべきなのか?そのひとつの解が、「演劇」の中にあったように思います。生徒たちの感想を読んでみても、役になって視野が広がり、仲間の発言から「気づき」があったと語るものが多くありました。そして、「何事にもたくさんの知識をつけて、自分の財産にしていきたいです。」と、知の必要性にも気づき前向きになってくれていることも、うれしく、たのもしく思えました。

 

高校生だけではなく、小学生、企業の研修セミナーでも『標本教室』を行っている松井先生と、今回一緒に参加してくださった和道かぴ先生、畑先生が、ファシリテイターとして先生が生徒たちの中に入って温かい雰囲気づくりをされているのも印象的でした。

松井先生、私道先生、本日はお忙しい中、ありがとうございました。

畑先生、毎回、素晴らしい時間のご準備、ご紹介ありがとうございました。