真に健全で個性豊かな人間教育の樹立

学校法人 武南学園 武南高等学校

10月 朝礼

2019年10月01日

10月1日(火)、朝礼が行われました。

校長先生は以下のようにお話をされました。

 

皆さんおはようございます。

大きな行事である、文化祭・体育祭が大成功に終わりました。 

皆さんの努力と協力に感謝します。

1学期の始業式で話した学力の3要素の鍛え方、知識・技能は授業で徹底、思考力・判断力・表現力と自ら学び続ける力、協調性は授業はもちろんですが部活動、学校行事で身につけましょうと言いましたが、それをしっかり実践してくれていました。

学力の3要素をバランスよく身につけることが皆さんの未来を明るくするためには大切です。

行事の多い2学期は、切り替えを上手にさらに充実させていきましょう。

 

 さて、今日はすしざんまいの木村清社長の話をします。

毎年正月にマグロの初競りで最高級のマグロを競り落とします。

すしざんまいの木村社長は皆さんも知っていると思います。

木村社長は四歳のとき、お父さんを事故で亡くしました。

お母さんは木村社長と姉ふたりの三人の子どもを抱え、想像を絶する大変さだったと思います。

でも、お母さんは愚痴ったりせず、身体は健康だし、畑も田んぼもある。だから借金も返せる。

そんな気丈なお母さんでも、子どもを連れて利根川に行き、生活苦から命を絶とうと思ったことがあったようです。

木村社長は

「でもね、私が元気に笑っているから、おふくろは思いとどまったらしいです。

『清に救われた』ってよく姉に言われましたよ」

と言っています。

木村社長は授業料が払えないので高校進学を諦め熊谷にある航空自衛隊生徒に入隊しました。

これで将来の夢であるパイロットになれると過酷な訓練に耐えましたが、中卒ではパイロットになれないことが分かりました。

そこで、通信教育で大検に合格、血の滲むような努力を続け航空学生になりました。

しかし、その夢は不慮の事故で目の調整力が低下して、潰えてしまいました。

木村社長は

「挫折といえば挫折ですが、そういうことは世の中にはいくらだってある。

お先真っ暗だと言って悩んだり、愚痴ったりしても何も始まらないじゃないですか。

おふくろがいつも言っていたように、健康な体さえあれば、なんとかなる。

状況を良く見るか、悪く見るかだけ。

考え方次第なんですよ。」

とこの言葉を実践し、その後も様々な困難を乗り越えて今のすしざんまいを築き上げました。

木村社長に関することで皆さんに話したいことは色々ありますが、今日はソマリア沖の海賊に関する話をします。

というのは私の息子も航空自衛隊生徒出身でソマリアにも派遣されました。

帰国した息子から2009年にソマリア沖の海賊と実録を映画化した「キャプテンフィリップス

」を一緒に観ようと初めて誘われたのが強く印象に残っているからです。

ソマリアは1990年代から内戦と2004年のスマトラ沖地震による津波により壊滅的な打撃を受けました。

生きるため海賊となるものが増え、2005年頃からは海賊被害が拡大し、ソマリア周辺海域の航行が危険な状態となりました。

そこで、各国の軍隊、日本の自衛隊も艦艇や哨戒機を派遣し、海賊対策をとることになりました。

自衛隊がジブチに基地をつくったのは2011年のことです。

ちょうどその前後に、木村社長のもとへ、ジブチから要請がありました。

自衛隊の先輩として「どうして海賊が出るんだろう」と不思議に思っていたこともあり、現地で状況を聞き、また大統領や水産関係者、そこで働く人、国民の声も聞いてみたそうです。

多くは小さい船の海賊ですから、蹴散らかすことはできるが、ほかに暮らす手段がなければまた海賊に戻るだけだ。

海賊が生まれる原因をなくし、彼らが今後暮らしていくための形を整えていかなければと木村社長は思ったそうです。

自衛隊は、海賊が出ないための防衛をやる。

治安維持は自衛隊や軍隊の仕事、一方暮らしをつくるのは民間の人たちのやることだ。

民間は経済活動を通して“中”からなくす。

どちらも必要なことで、二通りのことをしないと解決しない。

現地には冷蔵庫はあったけれども、魚を売る場所がない。

だから「獲ってもしょうがない」と言う。

現地で消費できる量は限られているし、食べ方もよくわかっていない。

しかも、漁に必要な漁船をはじめとする設備も粗末なものしかないという。

そこで、木村社長は漁業の指導を行い、中古の船を持ちこみ、販売できる仕組みを作り、漁業による生活の基盤をつくりました。

この生活の基盤を作ることと治安維持という二通りの取り組みにより年間約300件の海賊被害が激減し、今年は現時点で0です。

木村社長は目先の利益、儲けが第一ではなく、採算は取れなくとも求められることに応えていくことも「商売」ではないかと言っています。

また、社員に対しては何のために働くのか?と問いかけ、「食っていくため」とか「生きていくため」とかの答えに、

「それだったら動物と同じじゃないか。

人間は万物の霊長だ。

人のために生き、人の役に立たなくてどうするんだ。

人は他人に必要とされて初めて活かされるんだぞ。

人は一人では生きていけない、人の喜びによって生かされている」

と話すそうです。

「人は他人に必要とされて初めて活かされる」

こう考えれば皆さんが自分の使命を果たさなければならないとき様々な困難にあっても頑張り切れるのではないでしょうか。