真に健全で個性豊かな人間教育の樹立

学校法人 武南学園 武南高等学校

2学期 終業式

2020年12月23日

令和2年12月23日2学期終業式「お礼の手紙」

武南高校校長 本多 昇

皆さんおはようございます。例年ですと2学期は行事がたくさんあり、変化と彩のある学期なのですが行事がほとんど中止となり寂しい学期となってしまいました。しかし、その中でも、皆さんは感染防止対策にしっかり取り組み部活動や勉強で成果を上げてくれました。

年末年始は家族、親戚、友人との会食の機会も増えてきますが、感染防止対策を徹底して新型コロナウイルス感染症から自分自身を守り、周囲の人を守りましょう。また、外出も自粛しなければならないでしょうからこういう時こそ自学自習の習慣を定着させる時です。コロナ禍もプラスに変える工夫をしていきましょう。

さて、先日蕨市にお住まいの方からお礼の手紙をいただきました。紹介します。

 

武南高等学校 学校長 本多 昇 様

拝啓 

 突然失礼します。一言お礼を言いたくて手紙をします。

 先日、東京駅から京浜東北線を利用しました。私は車椅子利用者なので、混雑する時間をさけて利用しました。車両は空いていて、次の次の蕨でらくらく降車できると思い、反対側のドアの近くにいました。ところが、西川口で、たくさんの学生がどっと乗り込んできたんです。

 その時の絶望的な気持ちがおわかりでしょうか?

 もちろん、蕨駅では駅の係りの方がスロープを持って待っていてくださるので、おりそびれることはありません。係りの方は「お客様ご案内いたします!」と大きい声を出して誘導してくれるでしょう。でも、この大勢の学生さんたち、せっかく友だちと楽しくおしゃべりをして乗っているのに、無理矢理場所を開けさせられて、ちっ、と舌打ちしながらいやいやうごくのでしょう。その時、私は恐縮した気持ちで、すいません、すいませんとぺこぺこしながら降車するんでしょう。足が不自由なのに電車に乗った私が悪いんだと自分を責めて、また外出するのを控えることになるでしょう。

 ところがです。蕨駅近くになって、私が降車のために車椅子のブレーキを解除して、いざ動こうか、としたとき、さっとです、本当にさっと、全員が動いて私の前に道が開けたんです。モーゼが紅海をわけたかのように!お喋りで夢中で全くこちらを見ていないようで、実は私のことをきにしてくれていたんですね。 誰も、互いを注意したり、どくように促したりしていないのに、全員が動いたんですよ。それも本当に自然に。びっくりです。

 それで、私は、誰に「すいません」と謝ることなく、降車することができました。学生さんの動きに、ほれぼれしましたし、すがすがしいさわやかな気分になりました。少しでも疑ってすみませんでした。

 これは、日ごろから学校で、バリアフリー教育や人権教育をされている成果なのでしょうか。おそらく、この時だけでなく、電車に乗る時にはいつも他の人を気遣って、乗車されているんだと思いました。素晴らしいことだと思います。

 私は「隣人を自分自身のように愛さなければならない」という聖書の言葉をモットーとしています。自分の家族や仲間ではない他人の福祉に対しても私心なく関心を払うことです。自分の好きな家族や友人に対しては親切にできても、見知らぬ人に対しての親切な行動はなかなかできないことです。武南の学生さんたちは、まさに私に対して隣人愛を示してくださいました。立派なことです。こういう行動をとる若者が増えていくならば、世の中よくなっていうだろうな、と感じさせられました。

 降車する時に、きちんとお礼を言えませんでしたので、ぜひ校長先生の方からお礼を伝えて頂ければと思います。また、この時の学生さんだけでなく、おそらく全校の皆さん、同じ精神をお持ちの方なのだと思います。武南中高生の皆さんを褒めたいと思いますし、是非褒めて差し上げてください。

 子どもたちは、社会の宝です。本当にそう思います。そして、教育を担う先生方も大切なお仕事をされていると思います。これからも引き続き頑張ってほしいと思います。

 コロナで安全対策のお仕事も増え忙しいと思います。お体にお気をつけてお過ごしください。                 

敬具

 

一週間前にいただいた手紙です。武南高校の皆さんが褒められるととてもうれしいです。それも、人として当たり前のごく普通の行為が自然にできたことを褒められたわけですからなおさらです。このことから、いかに当たり前のことが当たり前にできるということが難しいことなのかが分かります。そしてその自然な行動を見ていてくれる。褒めてくれる人がいる。褒めてもらった方もうれしくなり、成長できます。

アリストテレスの言葉に「優秀さは訓練と習慣の賜物である。私たちは美徳と優秀さを持っているから正しく行動するのではない。むしろ正しく行動するから美徳と優秀さを持つことができるのである。」というのがあります。行動に移す、言葉に表すことにより皆さんのやさしさ、優秀さが伝わり、良き人格の形成に繋がります。皆さんは、武南高校の制服を着て登下校しています。誰か褒められれば武南高校全体が褒められたことになります。逆に、ルールを守らなかったり、マナーが悪かったりすれば武南高校の責任となります。新型コロナウイルス感染症で行事がことごとく中止となっている時です。武南高校への所属意識・誇り・責任を自覚して凡事徹底で周囲から愛される応援したくなる学校にしていきましょう。では、健康に留意して年末年始を過ごし3学期に、三年生は受験に備えましょう。